取り組みRSPOについて

RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)について

2006年シンガポールでの会議の様子

1. RSPOが設立された理由

パームオイルは油脂の中では既に大豆油を上回る最大の生産量となっており、食品工業、日用品工業における重要な資源として様々な用途に使われております。コープクリーンも洗剤原料としてパーム油から作られる高級アルコールを大量に使用しております。しかしながら一方で、パーム農園の拡大が、生物多様性保護にとっては極めて貴重な熱帯雨林地域の環境破壊を招いているという事実も認められております。このような状況の中で、パームオイルの持続的発展が可能な生産と使用の仕組みを作り上げ、世界の各国がそれを受け入れ、実行して行くことが求められて来ました。RSPOはこの問題に取り組み、持続可能なパームオイルの生産と使用を促進するために設立されたものです。

2. RSPO設立から現在までの経過

RSPOの発案者はWWF(世界自然保護基金)で、2002年にミグロス、ユニリーバ、セインズベリー、マレーシアパームオイル研究所等の協力の下に、 RSPOの組織統治機構の設立を準備するための委員会が設置されました。2003年8月、16カ国200人の参加の下、マレーシアのクアラルンプールで設立総会が開催され、2004年4月に「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」として設立されました。RSPOが目標とするところは、“持続可能なパーム油が標準となるよう市場を変革する”ことであり、そのために、生産と流通における認証制度を確立し、それを広く世界に普及する事にあります。2007年度のRSPO総会で、この認証制度が提案承認され、2008年に初めてのRSPO認証を受けたパーム油が市場にデビューしました。2019年末には、会員数が4400団体以上となりました。

3. RSPOの会員

2019年9月現在の全世界での会員数は約4400団体で、日本国内では2019年8月末時点で102社、コープクリーンの他、製造業、商社、流通小売業などの企業が会員登録されており、日本生協連も参加しております。会員に対しては、RSPOの活動を積極的に支え、持続的発展可能なパームオイル生産、調達、消費を促進させるために最善を尽くし、RSPOの諸活動を正しく伝えるために努力する事等が求められております。

4. 持続的発展可能なパームオイル生産のための原則、基準(P&C)

持続可能なパーム油生産の実現に向け、RSPOは2007年に8つの原則と39の基準を提示しました。その後、状況の変化に対応できるよう5年おきに見直しが行われ、2013年4月に8つの原則と43の基準に、2018年4月に8つの原則と39の基準に再改定されました。以下に8つの原則の概要について紹介します。

  1. 透明性の確保。パーム椰子の栽培者及び製造・加工業者は他のステークホルダー(利害関係者)に対して十分な情報を提供する事が義務付けられています。
  2. 法律の遵守。地域、国の法規制、及び国際的な法規制のすべてが対象となっています。パーム椰子生産地域での土地の使用権を巡る問題にも言及しています。
  3. 長期的な経済性及び財務の健全性を確保することを目的とした実現可能なマネジメントの必要性が強調されています。
  4. パーム椰子栽培者及び製造・加工業者に対して自然環境保護の立場から、土壌管理、化学物質の使用等の栽培基準が明示されています。また、全てのスタッフ、労働者、自作農、請負業者への適切な教育にも言及されています。
  5. 自然環境への責任及び天然資源と生物多様性の保護に関する項目で、プランテーションや製造・加工工場の環境影響緩和、希少種や絶滅危惧種保全、廃棄物管理、再生可能エネルギーの活用、廃棄物処理や土地整備で火の利用を避ける、汚染物質、温室効果ガスの排出削減についても明記されています。
  6. パーム椰子栽培者や製造・加工工場に関わる従業員及び個人に対する責任ある配慮について規定されており、利害関係者との情報交換や協議、苦情処理システム、権利損失に対する補償金交渉、従業員に対する賃金や条件水準、組合や団体交渉の権利、児童労働の禁止、差別の禁止、母性保護等が掲げられています。
  7. 新規プランテーション開発時や事業拡大時に求められる責任について述べられており、総合的な社会・環境面での評価、土壌調査や地形情報の利用、原生林や保存価値の高い土地を持つ地域の開墾規制、急勾配な地形や軟弱な土地での開発規制等が定められています。
  8. パーム椰子栽培者や製造・加工業者の諸活動を監視し、見直し、継続的改善を実証できる行動計画の必要性が記述されています。

5. 持続可能なパームオイルの認証制度について

パーム農園から始まり、最終製品ができるまでの各工程を認証することにより、全工程にわたる管理の連鎖がつながり、最終製品中のパーム油の追跡が可能となります。RSPOでは各工程での認証制度として、生産段階での「原則と基準」(P&C)に則って持続可能な生産が行われていることの認証(P&C認証)と、認証パーム油がサプライチェーンの全段階を通じ間違いなく受け渡されるシステムが確立されていることの認証(SCCS認証)という、2つの制度を設けています。いずれもRSPOは直接、審査・認証業務は行わず、第三者でのあるRSPO認定の認証機関が実施します。 認証されたパーム油には、認証品であることを証明するロゴマークを表示することができます。認証されたサプライチェーンモデルに応じて、使用できるロゴマーク及び認証パーム油ついての表示が異なっております。

6. 4つのサプライチェーンモデルについて

パーム油の複雑なサプライチェーンを反映して、以下の3つの認証モデルと1つの証券化モデルがあります。

  1. アイデンティティプリサーブド(Identity Preserved, IP) 認証された単独の農園から最終製品製造者に至るまで完全に他のパーム油と隔離され、どの生産農園から得られたのかが特定できる認証モデル。
  2. セグリゲーション(Segregation, SG)複数の認証農園から得られた認証パーム油からなり、非認証パーム油とは混合されることなく、認証油だけで最終製造者まで受け渡される認証モデル。生産農園を一つに特定できないが、認証農園から生産された原料であることが保証される。
  3. マスバランス(Mass Balance, MB)認証農園からの認証油が流通過程で他の非認証油と混合される認証モデル。物理的には非認証油を含んでいるが、購入した認証油の数量は保証される。
  4. ブックアンドクレーム(Book & Claim, B&C)物理的な認証油の取扱いが伴う3つの方式とは異なり、認証油の証券が生産者と最終製品製造者・販売者との間でオンライン取引されるモデル。これにより認証油のサプライチェーン体制が未整備で調達困難な場合でも、認証生産者を直接的に支援することが可能になる。

7. RSPO会員としてのコープクリーンにできること

日本国内におけるRSPOの認知度はいまだかなり低く、一般消費者にはほとんど浸透していないものと思われます。今後もコープクリーンが発行する宣伝物等を通じてRSPOについて継続的に発信を行ってまいります。認証パーム油製品の使用についても、2012年よりB&C方式にて粉末衣料用洗剤分の認証証券の購入を開始し、2020年までに当社製造COOP商品全品に購入を拡大しています。また、2019年にはマスバランス方式の認証パーム油製品を2品発売しました。今後も更に商品ラインナップの拡大を検討していきます。皆様方のご支援をお願い致します。